雑誌紹介 (アニメージュ, 2007年10月号)

バイト代がそこそこ入ったりしたので、桃華月憚に関するインタビュー記事等が掲載されている雑誌を集めています。
古雑誌って皆さんどこで買ったりしているんだろう、Amazonだと各冊ごとに送料かかるのでかなり損をしている気になる。
在庫の確実性がある分だけ便利ではあるけど。慣れないことはするものではないとも感じました。

色々集めてはいるのですが、表紙に「桃華月憚」と書かれていなくても特集されてたりするケースもあるので厄介で、
一時期『輪るピングドラム』の記事を収集していた頃に比べれば全く楽だけど、なかなか複雑です。
また筆者自身、『桃華月憚』をリアルタイムで観なかった、という最大の弊害があるので、事実誤認等があるかもしれません。その分、真新しい心意気で書きます。

それで、折角なので掲載されているインタビュー等を紹介してみようと思いました。
今回は『アニメージュ 2007年10月号』のpp.72〜75に渡って掲載されている特集です。

アニメージュ 2007年 10月号 [雑誌]

アニメージュ 2007年 10月号 [雑誌]


現時点で所持している雑誌の特集では最も豪華なような気がします。ヤミ帽コラボの絵は『西田亜沙子画集 -jam-』にもあるのですが、
もっとデカい絵が欲しい場合はこれは買っておきたいものですね。というかポスター欲しい。

pp.72〜73ではヤミ帽回の説明と思いきや、普通に桃華月憚の逆再生に関する説明とキャラクター紹介が主。
雑誌の発売日自体が2007年9月10日と、時期的に24話あたりだったので、本文も「物語はいよいよ大詰めに。」と書いてます。
この場合「大詰め」と呼んでいいのか微妙ですが…
ヤミ帽回については「しかも単なるゲストではなく、物語にも大きな役割を果たし、」と書いてありますが、
実際のところは寧々さんの過去にちょっと介入したくらいで現世の桃香と桃花の関係には影響は無かったですね。
あとはタイムスリップによる、太古の儀式が実際に執り行われたものであることの証明とか。

設定の紹介については

桃花が二千年前に存在した女神セイが憑依した状態であったこと、桃香が体内に持つ神秘の剣「石剣」によって、他の二人の女神・ジュナ、フウ、と共に、「浄化の儀式」によって消滅させたことは、今までの話数ですでに明らかになっている。

と書いてあります。普通のアニメの紹介だと滅茶苦茶なネタバレですね。
とはいえ、「浄化の儀式」という名称は25話で初出だったような?

pp.74〜75では監督の山口祐司氏、シリーズ構成の望月智充氏へのインタビュー。

――『桃華月憚』は逆再生という、珍しい構成になっていますが、なぜそうなったんですか?
山口 4年程前に制作した『ヤミと帽子と本の旅人』で話数のシャッフルをやったので、他に何か案がないだろうかと望月さんに投げかけた時、出てきたんですよね。最初は二の足を踏んだんですが、やってみる価値はあるなと思って腹をくくりました。
――望月さんは、どういう理由で逆再生を提案されたんですか?
望月 なんとなく思いつきで……。

という訳で、逆再生の提案者は望月氏であったことが明らかに。この後も

望月 原作も同じオービットだし、メインスタッフも一緒なので、『ヤミ帽』の時にやったことの上を行かないとダメだなと。誰もやってないことを一番最初にやることに意味があると思って、今後、最終回から逆にやる作品が出てきても、全部、『桃華月憚』の真似になるわけだから。

クゥーーーッ。とはいえ、Wikipediaの記述とは多少異なっています。*1
また、

――まず、ゲームの世界観があって、それを元にアニメの世界観を築いていったのではないのですか?
望月 アニメのシリーズ構成に取り掛かった時、ゲームは基本設定とプロットしか出来上がっていなかったもので。
山口 そう。だから、ゲームとはキャラや細かい設定がかなり違います。
望月 ゲームとストーリーを合わせることができなかったので、アニメはアニメで位置から作らざるを得なかったわけです。
山口 同時並行で作っていたので、アニメ側の設定がゲームに流用されることもありましたよ。

この発言も気になります。一応、ゲームを数時間で挫折した身として、設定の違いはそれなりに把握していますし、発売日・放送日にズレがあったのも分かりますが、アニメの設定が流用されたというのは初耳。何かしらで参考に出来る部分はゲームにも多少は含まれてはいるということでしょうか。
例として上がっているのは、

望月 ちなみに桃花が食いしん坊という設定は、アニメが先でした。

です。桃花役の早見沙織さん自身、後の『セキレイ』、『STAR DRIVER 輝きのタクト』等で大食いヒロインの設定は受け継がれているため、この作品が起点であったと言えなくもないでしょう。

――逆再生ということは、26話から1話に向けて、放送とは逆の流れで物語を作っていったんですか?
望月 いえ、放送する順に時間を遡って考えていきました。TVアニメの場合、シナリオを全部書き終わってから制作に入るというのは、スケジュール的に不可能ですから。

ここは重要ですね。言っている事自体は当たり前のことですが、これが無かったら19話、25話の挿入される絶妙なタイミングは考慮されなかった、あるいは存在し得なかったのではないかと思えます。それにしても遡って書いていても破綻が目立っていないのは技巧的。

――『桃華月憚』はアニメ誌向けに先のあらすじを公表しないので、僕らとしても、この先どうなるか分からなくて、楽しみな半面、悩まされました(笑)。
望月 今は雑誌にもネットにも放送前の情報が氾濫しすぎかもしれませんよね。今回、情報を意図的に抑えてみて、改めて、情報が出回りすぎていたんだなと感じました。

流出に関してはまとめブログの存在もあり、今でも散見されますね。最近は分からないですが『世紀末オカルト学院』はYouTubeに3話まるまる流出してました。
女性声優が脚本を担当した回についても、「担当した」という事実のみ公表され、何話になるかは伏せられていたので、EDで確認するまでは分からなかったとか。*2

――清水愛さん、能登麻美子さん、山本麻里安さん(五十音順)がシナリオを担当しているというのも、新しい試みですね。このアイディアはどうやって生まれたのですか?
望月 それも思いつきですね。
山口 ちょっとちょっと!(大笑)望月さんは照れ屋なので、僕がフォローします。もちろん思いつきではなく、女性の20代のライターさんを探していたんです。若い人の感性で、少女漫画風に書いてもらおうと思って。でも、なかなかぴったり合う人が僕の周りにいなくて、じゃあ、声優さんに書いてもらおうかと。
――若手の女性声優さんがたくさん登場している中で、あの3人を選んだ理由は何ですか?
山口 アフレコ現場で話していて、しゃべり言葉が文学的だなと感じた人ですね。3人ともアイディアに満ちたシナリオを書いてくれて、僕らが修正に苦労したとか、そんなことは全くありませんでした。それぞれ別の個性の持ち主なんですけど、やっぱり20代の女性の感性はすごいなと。僕にはとても刺激になりました。清水さんは、携帯メールでプロットを書いたと言ってましたし(笑)。

元々「声優に脚本を書かせる」という目的があったわけではなく、「女性ライターを探していて、結果的に女性声優に行き着いた」訳ですので、ニュアンスが違ってきますね。

――少々エッチなシーンもありましたが、そこにも女性ならではの視点が入っているんですね。
山口 そうですね。男性が書く“エロ”と女性が書く“エロ”は違いますので。そして望月さんはどっちも書ける人なので(笑)。

確かに10話なんかは女性が書く“エロ”の印象があります。それぞれの逆再生に関する想いについては、

山口 僕は『桃華月憚』は大いなる回想ドラマだと思っているので、最終回を演出していて、やはりジ〜ンと来るものがありました。
望月 導入といっても、これから起こることを全部知った上で観るわけですから、単なる第1話とは違う何かがあるでしょうね。
山口 そう。それが切なかった。あと、ちなみに最終回は、真琴役の喜多村英梨さんが原画を描いてます(笑)。

とのことで、その「何か」が何なのかは視聴者次第ですね。

――『幕』は、大人キャラの過去が舞台劇として描かれていて、驚かされました。
山口 清次が、なぜ清春と呼ばれるようになったかが分かる話ですね。
望月 普通に回想をやるのもありきたりなので、舞台仕立てにしてみました。
山口 変化球ばかり考えているので。25話も構成がかなり変わっています。サブタイトルは『〆(エックス)』。
望月 上津未原の歴史を描いた内容になっています。
山口 しかも時間軸がちょっとずれている。この25話を見ると、上津未原という土地に秘められていた謎が、全て分かると思います。
――そこから、桃香と桃花が初登場する最終回へと繋がっていくというのは、すごいですね。
山口 でしょう?(笑)二人がどうやって登場するかは、見てのお楽しみです。

>清次が、なぜ清春と呼ばれるようになったかが分かる話
これ、初視聴で意識していた人っていたんでしょうか……

>この25話を見ると、上津未原という土地に秘められていた謎が、全て分かると思います。
謎が全て明らかになったというより、明らかになっていない儀式の謎に比べて見通しが良くなった具合で、メタ・フィクション的である25話ならではの見せ場があったと感じます。

下段にはヤミ帽編についてと、食について。
ヤミ帽編について興味深い箇所を引用すると、

――特にケンちゃんと由美子さんのかけ合いについて、ひと言お願いします。
山口 ケンちゃんのアドリブに関しては、高木礼子さんも腕を上げられたなって思いましたね。伊藤美紀さんもこの『ヤミ帽』の回をきっかけに吹っ切れたんじゃないでしょうか(笑)。
――『旅』の回で、「うまく作れた。成功した」と思うのは?
山口 う〜ん、『桃華月憚』の歴史設定とうまく繋げられたところでしょうか。
望月 『ヤミ帽』と『桃月』、どちらの作品にとっても矛盾がないところだと思いますね。

とのこと。タイムスリップによる儀式の発見を、「現世からの別の世界への移動」として捉えた上でのヤミ帽回、かもしれません。
食については、

――『桃華月憚』では、毎回、食べ物が美味しそうに描かれていることが印象に残りました。キャラクターの美麗さと、日常を表す食べ物のギャップが面白い部分でもありましたが、食べ物を頻出させた意図をお聞かせください。
山口 僕が好きだからです(大笑)。“食”のシーンは、物語が落ち着くというか、どこかほっとさせてくれる要素があると思っています。池波正太郎さんの作品にも、会話はシリアスだけど、美味そうに食事をするシーンがいくつもあるんです。ある種のオマージュですね。

これも興味深いですね。池波正太郎作品は読んだことがないので、オマージュならば読んでみなくては…
食事ではないですが、胡蝶三姉妹が紅茶を飲んで「今は、この一杯のお茶が…人生。」と話す場面は底知れぬ重みと落ち着きがあります。

結構な量の引用をしてきたつもりですが、これでもまだ重要な発言はあって、でも全部引用すると途方も無いため、最小限のピックアップとしました。
放送から5年(私は初視聴から4年半)、ようやく謎を少しずつ紐解いている心地です。
雑誌はまだ数冊あるので、ちょくちょく紹介していこうと思います。

*1:Wikipediaでは「2人は「今後『逆再生』構成にしたアニメが出てきても、『桃華月憚』の真似になる」と語っている」とあるのに対し、本記事では望月氏のみが発言している。桃華月憚 - 逆再生 - Wikipedia

*2:声優アニメディア 2007年7月号』pp.38〜39より