『桃華月憚』全セリフ:制作No.02「歌」

制作No.02「歌」
・脚本:望月智充 ・作画監督:沈宏
・絵コンテ:山本秀世 ・演出:小林浩輔

【アバン】
ナレーション「桃華月憚

【Aパート】
ナレーション「サブタイトル 歌」

桃香「今日。まさに今日…」
鬼梗「(上津未原から全ての魔力の痕跡が、消えるだろう。真琴よ、時は今こそ来たれり。)」
真琴「ふっ…クション!うぅ…ん?」

清春「百合子」
由美子「お、お兄様…」
清春「どうした。具合が良くないのか。」
由美子「少し…」
清春「大事にしろ。」
由美子「はい…」
清春「ジュナのエネルギーを鎮めるために、戦後ずっと行われてきた上巳の歌会だが、愛姫が再臨した今となっては、もはや有名無実だな」
由美子「そうなのですか…」
清春「ただの、手慰みの学園行事だ」
寧々「生姜湯をお持ち致しました。」
由美子「あら、ありがとう」
寧々「清春様」
清春「何だ」
寧々「お言葉ですが、今年の歌会は、例年とは違っていることでしょう。」
清春「ん?」
寧々「なにもかも、違うはず」
清春「フン。分からんな」

桃花「ふぁ〜あ。…ハーッ。あーあ、昨日の夜、これが最後だと思って、にんにくラーメン食べちゃったもんなぁ…」
桃花「(私には、たった一年間の記憶しかない。でも、私には2000年の記憶もある。)」
桃花「マコちゃん」
真琴「桃先輩…」
桃花「ちょ、ちょっと…」
真琴「真琴、もう行かなきゃ…もうすぐ、上巳の歌会が始まるから…」
桃花「そうね…」
真琴「桃先輩、ステキです。アマービレです。」
真琴「先輩って、今日の儀式では、何を着るんですか?」
桃花「えっ…?あの…セイの服…」
真琴「じゃあ…!これ、記念に欲しいです…いいですよね?」
桃花「えっ、そんなぁ、ダメです」
真琴「ありがとうございます!」
桃花「あーあ。マコちゃんのお陰で、緊張感も何もあったもんじゃない。今日が、大切な日だったことも、うっかりすると、忘れちゃいそう…」

胡蝶「清く」「楽しく」「美しく」
胡蝶「本日は、取り寄せたばかりの虎茶にございます」
胡蝶「良い香り。人生の悦び。」
章子「ウヴァの、セカンドフラッシュね。美味しいわ」
生徒「恐れ入ります」
胡蝶「あ〜ら、手が滑ったわ」
胡蝶「まあ〜姉様ったら」「お行儀が悪いですわ」「本当に、私としたことが」「オーホッホッホ」
章子「舐めてんじゃねえぞ!二宮の妖怪変化ども!!」
胡蝶「目には目を」「歯には歯を」「受けた恩は」「お返ししましょう」
鬼梗「来たか、真琴」
真琴「鬼梗様ー…!鬼梗様…」
章子「マズい、奥宮の姫に…」
胡蝶「鬼姫に…!」
胡蝶「真琴」
真琴「はいっ」
胡蝶「妾は、少し出てくる。一人で出来るな?」
真琴「はいです!カンタービレですね?」

桃花「(たとえ、もしも、今日が死ぬ日であったとしても、死ぬ、その瞬間まで、人は生きているし、心は夢を捨てていない。いつもと変わりなく身を清めて、いつもと同じように、大好きな人を、心は想い描いている。たとえ、もしも、万が一、ナニがアレであったとしても、お腹はすくし…)」
桃花「いただきます」

胡蝶「もう一度これを食らいなさい!」
章子「ヘッ!!なんの!!!」
春彦「…!僕のお父様は理事長だぞ!全員退学だー!」
生徒「守東春彦さん、間もなく始まりますので、着席して、お静かにしてください」
春彦「あ、はい」

ジュナ「おはよう桃香
ジュナ「本当さ、疲れちゃった。だって2000年だもの。次の儀式まであと1500年も待ってらんないっつーの。もうここいらで兄さんの、イサミヒコの魂も救ってあげたいしね。」
桃香「お前さ、意外とおしゃべりなんだな」
ジュナ「いいじゃん。春なんだから。春にはさえずるのを止められない。私は愛らしい小鳥。なんてね」
ジュナ「ここんとこ15年ほどは、私ほら、守東の娘に取り憑いてたっしょ?あの娘は、居心地良かったわー。別の人生、生きているみたいで、ちょっと面白かったよ。時々私さ、自分で自分が止められなくなったりするじゃない?だから、少し骨休めっていうかね。やれやれ」
フウ「おしゃべりは終わったか」
ジュナ「ああ、フウ。よく来たじゃないの」
フウ「つまらぬ物言いはよせ。守東桃香
桃香「何だよ」
フウ「そなたの内なる石剣は、すべての記憶を蓄蔵しているのであろう?ならば消滅の言の葉をも、記憶しているはず。」
桃香「…!」
フウ「今こそ、その言の葉を発するが良い」
桃香「…」

アイキャッチ

【Bパート】
桃香「フッ。あんたらはそれでいいだろうさ。人に命令して、気楽なもんだよな。だが、そんなら俺は何だ?何のために生まれさせられて、こんな所にいるんだ?…おい。誰でもいい。俺の存在の意味を、言え!!」

生徒「それでは、今年度の、上巳の歌会を始めます。まず最初は、生徒会長の鬼梗さんによる、先触れの歌の吟詠です。鬼梗さん、お願いいたします。」

鬼梗「守東桃香よ」
鬼梗「聞け、桃香。ここ上津未原の地は、既にして、人外魔境。あまりにも長く、人ならざる者たちの力により、解きて、そして場を歪められてきた地じゃ。もはや、全てが魔界へ沈みかけているとさえ言える。それらを取り鎮め、平らかにせんと、妾が為してきたる様々なことも、これが限り。桃香、そちの存在は無意味にあらず。そちと妾とは、解けぬ糸で結ばれた、同胞じゃ。いや、そちはむしろ、妾の子、なのかもしれんな。」
桃香「は?気持ち悪いこと言ってんじゃねえよ」
鬼梗「真名姫。いや、ジュナ」
ジュナ「鬼梗…」
鬼梗「結ばれたかった」
ジュナ「私も…」

生徒「では、メインの吟詠に入ります。今年度の歌姫、犬飼真琴さん、お願いします。」

鬼梗「妾は、この上津未原を、永久まで見守るであろう。直に、セイもここに来よう。上巳の歌会も始まる。しばし待つが良い。」
真琴「桃先輩のために、真琴の内なる龍皇よ、今こそ」

真琴「春過ぎて 夏来るらし 白妙の 衣乾したり 天の香具山」

セイ「ジュナよ。今日ばかりは、恨みを忘れようぞ。」
ジュナ「望むところ」
桃花「私も、来ました」
桃香「いいのか」
桃花「はい」
桃香「桃花…」
桃花「桃香ちゃん…」
桃香「ひとつ、教えてくれ…」
桃花「何ですか?」
桃香「なあ、愛しあうって、何だ?」
桃花「愛しあう?」
桃香「それってさ、人生に必要なことなのか?」
桃花「別に、必要ではありません。でも、それがない人生は…」
桃香「それがない、人生は…」
桃花「桃香ちゃんがいない、私の人生です。」
桃香「そうか。…桃花、お前今朝納豆食っただろ」
桃花「…食いました」
桃香「…ふっ、色気のねえ女」

真琴「北山に つらなる雲の 青雲の 星離りゆき 月も離りて」

ジュナ「イサミヒコ!」
フウ「イサミヒコ!」
セイ「イサミヒコ!」
桃香「違う!俺はイサミヒコではない!イサミヒコは、もうどこにもいないんだ!ジュナも、フウも、セイも、どこにもいない、イサミヒコを見てたんだ…ずっと。」
桃香「汝らの慟哭を知りたる、この石剣の通力を解き放ち、今ぞ、悉皆を無へと帰さん!」
ジュナ「イサミヒコの御霊を、救い給え…」
フウ「イサミヒコの御霊を、救い給え…」
セイ「イサミヒコの御霊を、救い給え…」
桃香「消滅の、言の葉」

真琴「いなと言へど 強ふる志斐のが 強語 このごろ聞かず 朕恋ひにけり」

章子「二宮の、姫たち…どうしたというの…」

桃香「生きて、こんなにつらい思いを背負うことと、始めからこの世に生を受けないことと、どっちがマシなんだ…誰か、答えやがれ!」

由美子「あら…ん?この上津未原で、どうして携帯電話が鳴るの?」

ナレーション「ツヅク」

【予告】
桃香「剣が、切り裂く。」
由美子「剣が、切り裂く。」
桃花「剣で、殺す。」
ナレーション「次回、『剣』」